一時期、あまりにもまわりが「琳派、琳派」って言うので、
若干敬遠気味になっていたのだけれど、
今回観て、あらためて思ったのは、
やっぱり光琳は、とんでもない天才だな、
っていうこと。
特に二つの屏風絵に、度肝を抜かれた。
・「菊図屏風」
眩いばかりの金色と、
鮮やかな白菊のコントラストも素晴らしいのだけれど、
注目したいのは、菊の花以外の、茎と葉の部分。
光琳は、緑と黒の二種類を配置しているのだが、
実際には、黒い茎や葉などあるはずがない。
しかし、写実的にすべて緑にしたのでは、インパクトに欠ける。
そこで大胆にも光琳は、一部の茎や葉を、墨で描いたのである。
一見すると写実的なものの中に現れる、わずかなフィクション。
まさに「虚実皮膜の間」のアートとでも言おうか、
繊細さの中に、常識破りな大胆さを持ち込んでいるのだ。
・「雪松群禽図屏風」
重心は、右にある。
右下から右上に伸びた、デフォルメされた松。
その下に群がる鴨。
鴨たちの視線を左に向け、
左側にも鴨を散らすことで構図的なバランスを取るのかと思いきや、
そこに、ズドン、と、「青い塊」が突っ込んでくる。
流麗なメロディの中に、いきなり不協和音を放り込み、
無理やり全体を統一させてしまうような不敵さ。
一羽一羽の鴨が念入りに描かれているだけに、
構図の奇抜さが、一層際立ってくる。
金地と松の緑、雪の白、そして水の青という組み合わせも絶妙だ。
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光琳に続いた、抱一や其一といった琳派の絵師たちも、
確かに光琳のエッセンスを受け継いではいるのだけれども、
これらの屏風絵に見られるような、
大胆さ、潔さという点では、正直物足りない。
常識外れなことをしても、
見る側を違和感なく納得させてしまうのが、
光琳の凄さであり、魅力だと思う。