浄瑠璃、長唄などの江戸時代の音楽については、
かなり詳しく語られている。

それ以外のジャンルについては、端折って書かれているのだけれども、
江戸音楽愛好家であれば、一度は目を通しておいてもよいかもしれない。

特に、うた沢の心得として、
梅暮里谷峨の「はうた一夕話」の一節を紹介している箇所が面白くて、
曰く、

「銭湯にてうたふべからず。わがままぶしになりて三味線に合ず」

うた沢に限らず、何事も自分勝手に稽古していると、
知らず知らずのうちに、本来の形からずれていってしまうのであろうが、

それを、「銭湯にてうたふべからず」と、シチュエーションを断定しているところが、
式亭三馬の「浮世風呂」などが思い浮かんで、ニヤリとしてしまう。