だいたい「超辛口」などという言い方を、いつ、誰が始めたのか。
「超」が接頭語的に付いて、「すごく~」となる使い方は、
「超満員」とか「超伝導」とか、例がないわけではないが、
なんでもかんでも、「チョーカワイイー」とか「チョーウケル」とか、
軽々しく使うようになったのは最近のことであろう。
そこでもって、「チョー辛口」とは、どうもけしからん。
せめて「極辛口」とかにした方が、カレーみたいではあるけれど、
日本酒らしさが出ているような気もするのだが。
まぁそんな愚痴はさておき、
「チョー辛口」なる日本酒は、たまに見かける。
でも大抵、飲んで後悔することが多くて、
辛口というよりも、渋いというか、日本酒の良さをすべて殺してしまったような、
絶世の美人も齢五十を過ぎればかくもあらん(失礼)、とばかりの「コレジャナイ」感。
なので、この「越乃景虎 超辛口」も期待しないで飲んでみたのだが、
ファーストコンタクトは、まさに「チョー辛口」なのだけれど、
そこからの第二波が、ふくよかでほのかに甘く、まさに日本酒のそれである。
これはワインでも言えるのだけれど、
所詮、ヒトの味覚は原始的な大脳旧皮質での仕事なので、複雑な判定などできっこない。
だから、第一波と第二派で、違う味覚が感じられれば、
おぉ、これは良い味ではないか、と脳を錯覚させることができる。
(人間関係でいうところの、第一印象と話してみた感じとのギャップですな。
なので僕は、第一印象は極力最低になるように努めている。)
要するに、旨い酒というのは、いくつもの表情をもっているというわけです。
で、この酒はその表情の差というか、チョー辛口から日本酒の旨みまでの飛躍が、
ヒジョーに分かりやすく造られているため、
けしからんとは言いながら、旨い酒なのである。