天文関連の用語は、中国からの輸入が多いせいなのか、
漢字一文字で表されるものが、結構ある。

大学受験のときは、それぞれのメカニズムについてはもちろんだけれど、
「何でこんな字を使うんだ??」と理解に苦しみながら覚えた記憶がある。

特に科学用語の場合、漢字で書かれると難解なものでも、
英語に直すとすんなり理解できるものが多いので、
ちょっと調べてみることにした。

●「合」
「合(ごう)」とは、地球から見て、惑星が太陽と同一方向にある状態のこと。
特に内惑星(水星・金星)の場合は、太陽と地球の間にあるときを「内合」、
太陽の向こう側にあるときを「外合」と呼ぶ。

英語だと、「conjunciton」。
英和辞典とかで、よく「conj」とあるのは、これの略で、
この場合は「接続詞」という意味。

要するに、「conjunciton」とは「つながってる」という意味なので、
「惑星―太陽―地球」あるいは「太陽―惑星―地球」という位置関係を表す語としては、
適切だと思う。

「conjunciton」が、俯瞰的に見た位置関係を表しているのに対し、
「合」という呼び方だと、観察者の視点をベースにして空を平面的に捉えているように感じられる。

西洋と東洋での物の見方の違いだろうが、
なかなか面白いと思う。

●「衝」
「衝(しょう)」は、「合」とは反対で、
地球から見て惑星が太陽と逆方向、つまり「太陽―地球―惑星」の位置関係の状態を指す。
(当然ながら、「衝」は外惑星の場合に限る)

英語だと、「opposition」。

「opposition」は、「反対」という意味なので、これは適切なのだけれど、
問題は「衝」の方。

日本語的に考えると、「衝」という文字に「反対」というニュアンスはない。

そこで久々に、家にある中国語辞典を引いてみたところ、
「衝」には、前置詞として「~に対して、~に向かって」という用法があるようで、
ここから来た使い方なのだろう。

それにしても、「衝」なんて用語は分かりにくいし、
科学用語として適切ではないように思われるので、
見直した方がよいのでは??

●「矩」
お次は、こちら。
そもそも読めねーよ、って言われそうですが・・。

「矩(く)」というのは、地球から見て外惑星が太陽と直角の位置に来たときを表す用語で、
「東矩」「西矩」の二カ所が存在することになる。

これは、英語にすると「quadrature」だそうで、見たことのない単語だ。

ただ、「quater」と同じ接頭語が付いているので、
4分の1、つまり直角を表しているんだということは想像が付く。

漢字の方もあまり見慣れないかもしれないが、
「矩」というのは、「かねじゃく」の意味らしい。

四角形のことを、「矩形」と呼ぶのはまぁ目にするし、
要するに「直角」という意味。

この用語も、ちょっと時代遅れのイメージが。

●「留」
惑星は、地球から見ると、動く方向を変えることがある。
その方向転換の間、同じ場所にとどまっている状態を、「留(りゅう)」という。

これは、分かりやすいかも。

英語だと「stationary」。

恥ずかしながら、最初、「なんで文房具?」って思ったのだけれど、
「文房具」は「stationery」でした。。

「stationary」は静止状態のことで、駐留軍を表すときにも使うそうだ。

●「食」
「食(しょく)」は、「日食」「月食」でおなじみなので、
説明するまでもないだろう。

英語では「eclipse」。

語感がカッコイイからか、商品名等、いろいろなシーンで目にすることがある単語だ。

●「犯」
最後は、「犯(はん)」。

二つの天体が異常に接近することで、
「月が木星を犯(はん)する」のような使い方をする。

これはかなり特殊な使い方なので、通常の国語辞典には載っていないと思う。

ただ、本家中国の「百度百科」で「犯」を調べると、古代の天文用語として、

犯者、月及五星同在列宿之位、光耀自下迫上、侵犯之象。

と、ちゃんと説明されていた。

これを一語で表す英語は、さすがにないようだ。

現代ではあまり使うことはないだろうが、
何となく物騒な語なので、できれば他の用語を使いたい。