まさにこの本を読んでいた9月16日、
著者の巽好幸氏が率いる、神戸大海洋底探査センターが、
鬼界カルデラの調査を開始するというニュースを知った。
巨大カルデラは、
そのとてつもないエネルギー源(マグマ溜まり)が、
どのような状態になっているかがよく分かっておらず、
それを確かめるためには、
実際にカルデラの近くで人工地震を発生させ、
地震波の伝播の仕方を詳しく調べるしかないと、
まさに著者がこの本の最後で力説していたのである。
一言で火山の噴火といっても大きく2種類があり、
通常の噴火とカルデラ噴火、
この本のタイトルの前者(富士山大噴火)は通常の噴火であり、
後者(阿蘇山大爆発)はカルデラ噴火のことを表している。
通常の火山の噴火であれば何となくイメージはつくが、
カルデラ噴火と言われても、なかなかピンとこないかもしれない。
著者の語るところによれば、
仮に九州でカルデラ噴火が起きた場合、
1億人(!)近くの犠牲者が出る可能性もあるとのことで、
実際、縄文時代に大爆発を起こし、
南九州の縄文文化を絶滅させたばかりか、
東日本にまで大量の灰を降らせた犯人が、
まさにこの鬼界カルデラなのである。
仮に同規模の爆発がいま起きたすると、
首都圏には20cmもの灰が積もるという。
たった20cm?と侮るなかれ、
20cmの灰が、交通・ライフライン・農業・健康その他に、
どれほど甚大な影響を及ぼすかについても、
この本ではきちんとシミュレーションされている。
最近の研究によれば、
太古の昔、我々ホモ・サピエンスが絶滅しかけたときがあったが、
その原因はインドネシアでのカルデラ爆発だったのではないかと言われている。
噴火の被害というと、遠く離れた地では無関係のように思うかもしれないが、
大量の灰が大気にばら撒かれ、それが地球規模に拡散することで、
種のレベルを絶滅させるぐらいの気候の変化が生じるのだ。
(いわゆる「核の冬」の状態を想像するのがよいかもしれない。)
3.11があったせいもあり、我々は地震については敏感になりつつあるが、
火山については、まだまだ意識が回っていない。
御嶽山で数十人の犠牲者が出たことは記憶に新しいが、
あれは通常の噴火であって、
カルデラ爆発ともなれば、地球規模の大参事になる可能性がある。
しかもそんなカルデラが、我が国には7つも8つもあるのだから、
決して煽りなどではなく、
真摯な態度と学問的な裏付けでもって警鐘を鳴らす著者の行動は、
もっと注目されるべきである。
「天災は忘れたころにやってくる」というのは、
漱石門下でもあった、大科学者・寺田寅彦の名言だが、
まずは忘れないことから始めなければならない。
[…] カルデラ噴火の恐ろしさはこの記事でも紹介したが、 地震や津波、あるいは小惑星衝突などに比べ、 […]