「大絶滅時代とパンゲア超大陸」(ポール・B・ウィグナル)

 

「進化学」という学問分野があるのに対し、
「絶滅学」が存在しないのは、

生物の絶滅は、気候・地質・天文・生物など、
各分野の学問知識を総動員しなくてはならず、

一学問としてのアプローチでは、
その真相が掴めないからではなかろうか。

だからこそ各分野の専門家は、
これまで地球上で起きた絶滅の原因を、
自分の専門に結び付けて語りたがるのと同時に、

絶滅規模としては、比較的大したことはなかったが、
恐竜が滅びたという点でインパクトの大きかった、
白亜紀-第三紀の絶滅に倣って、
安易に天体衝突を原因として劇的に語る、という風潮もあった。

過去の絶滅を考えるにあたっては、
その確実な真犯人を言い当てるのが難しいのと同様、
あらゆる犯人候補の可能性を否定することができない、

つまりどのような容疑者であっても、
都合のよい証拠だけを提示することで、
あたかも真犯人であるかのように語ることができてしまう。

この本は、そのような「安易な犯人捜し」の対局に位置するものだ。

過去の環境のわずかな変化を手掛かりに、
ひとつひとつの可能性をつぶさに検証し、
各事象間の因果関係を丁寧に検討していくさまは、

大衆向けの本としてはかなり退屈な部類となってしまうだろうが、
科学本としては、あるべき姿である。
(ただ、表紙のイラストのせいで、
勘違いしてしまう方もいるかもしれない)

巨大火山の噴火→温暖化→海洋の無酸素化

という流れがこの本の語る「大絶滅の真犯人」のメインストリームであるが、
結果としてそれが正しいのであれ、間違っているのであれ、

いわゆる「絶滅ビッグ5」以外の絶滅においても、
状況証拠を積み重ねながら推論していくその内容は、
「絶滅マニア」にとっては貴重である。