「怪しいものたちの中世」(本郷 恵子)

 

日本における中世とは、
いつからいつまでを指すのかはよく分からないが、

律令制度が崩壊し、
体制(土地)に縛られない漂泊民が活動し始めたという意味では、
平安末期あたりが、ひとつの分岐点となるのであろう。

特に、源平合戦の混乱の中で、
一時的な無法地帯が出現したであろうことも想像でき、
そこには、「怪しいものたち」が様々に活躍したのは間違いない。

つまり日本の中世とは、支配者たちのドタバタ劇に乗じて、
庶民のパワーが形となって開花し始めた時代であり、
戦国から江戸にかけての文化の源流は、この時代に現れることになる。

なので当然のことながら、この本のタイトルをみたときは、
そんな庶民たちの間に生まれた、怪しい文化の紹介を期待していたのだが、

それは第一章の博打の話だけで、
残りは政治的な、支配者階級におけるエピソードが中心となってしまっており、
そこがこの本を、ツマラなくさせてしまっている決定的な要因である。

マジメな研究者がマジメに書きすぎてしまって、
題材の面白味が消されてしまったという印象。