「ダークマターと恐竜絶滅」(リサ・ランドール)

 

美人さんであることでも有名な著者による、
最新の宇宙論。

第1部で宇宙全体について俯瞰し、
第2部で太陽系について語られる。

ここまででも、最新の宇宙論が満載で、
第1部と2部だけでも読む価値が十分にあるだろう。

最後の第3部がダークマターについてで、
彼女の説の骨子を説明すると、以下のようになる。

過去の生物たちの絶滅や、
地球上のクレーターの成立年代を調べると、
地球が周期的な「爆撃」を受けていたことは明らかである。

そして、それが周期的であることを考えると、
オールトの雲から放り出された彗星が犯人であると予想され、

では何が、オールトの雲の秩序を乱したかといえば、
太陽系が銀河を垂直方向に、周期的に動くことによって、
何らかの力が作用したためではないか。

太陽系が銀河を垂直に移動するときに、
そのような大きな力を受けるというのは、
ダークマターが、銀河のディスクの内側に、
同様なディスクを形成しているからではないだろうか。
(「ダブルディスク・ダークマター理論」)

エレガントな説だと思う。

しかもダークマターと通常物質との間の、あるいは、
ダークマター同士の力の干渉までも考慮にいれ、
もちろん推測は交えながらも、理路整然と論を進めてゆく。

ただ、個人的に気になることが3点あって、
まず1点めは、

そもそも過去の大量絶滅が、
本当に周期的であったかどうかは疑わしいこと。
これについては、学者の間でもいまだに論争が続いている。

2点目は、
地球上のクレーターは、風化や地殻運動で消滅してしまうことが多いため、
サンプル数が50個未満と非常に少なく、
果たしてそれだけのサンプルをもって、
過去の地球は周期的な爆撃を受けていたと言えるのか、
ということ。

そして3点目は、
仮に周期的にオールトの雲から彗星が放り出されていたのだとしても、
大部分は、巨大な外惑星に捕獲されるはずで、
地球に到達するものはほんの一部であり、
それは周期的にカタストロフィを起こすに足るレベルだったのか、
ということ。

これらの疑問はあるものの、
説としては非常にワクワクするものだし、

何といっても、(これは偶然に)数年後の衛星の観測結果により、
ダークマターのディスクの存在可能性をある程度知ることができるのは、
運を味方に付けたとはいえ、
仮説の証明へ向けた正しい手順となっているのだ。