「日本の一文 30選」(中村 明)

 

文豪の手になる作品の中から、これぞという一文ずつを抜き出し、

どこがすぐれているのか、なぜ感動するのかを、
分析するという本。

分析そのものは、ワインの味の講釈を聞くようなもので、
まぁそんな気もするし、そんなでもない気もする。

それよりも、著者が作家たちの自宅でインタビューをしたときの回想の方が、
意外な発見もあって興味深い。

特に井伏鱒二あたりは、小説音痴な僕は顔すら思い浮かばないのに、
彼の喜怒哀楽の表情がはっきり想像できるほど、
イキイキとした回想になっているように思う。

つまるところは、この名人にしてこの名文あり、というか、
文章は書き手の人間性を映し出すものだから、
名文を知るには書いた者の人間性を理解する必要があるということなのだろう。