「地震前兆現象を科学する」(織原 義明・長尾 年恭)

 

こういう言い方をしては失礼かもしれないが、
これはすごくマトモな本。

地震予知の現状と、我々がどうすべきかについて、
データも交えながら、きちんと説明されている。
(データを恣意的に扱ってもいない)

この本にも書かれているが、
国が地震予知に対して投入している予算は、
年間たったの1,700万円。

おそらくその辺のIT企業の社長の年収よりも安い。

確かに地震予知というのは、天気予報とは違い、
当たっても外れても、被害や損失を避けられないものであり、
大々的な国家プロジェクトとして取り組めないのも事実。
(ましてや、その予測率・的中率は現状極めて低いので。)

であれば、現状手に入るデータで何を知り、何をすべきなのか、
というのがこの本の主題であるのだが、

だがおそらく、こういう危機意識は地震学者にも、
気象庁の役人や政治家にも、まったく欠如しているのだろう。

生態系や実験動物など、地震以外の分野のデータに、
実は地震予知の鍵が潜んでいるのかもしれないが、

そのような学問分野を超えた横断的なプロジェクトを、
誰かが率先してやらなければ、
いつまでたっても、M9の巨大地震ですら予測できない、、
という状況が続くことになる。

5年前の東日本大震災の類似例として、
西暦869年のいわゆる「貞観の三陸沖地震」のことは、
マスコミでもよく取り上げられるが、

実はその9年後には武蔵・相模の国をM7クラスの地震が襲っているし、
そのさらに8年後には、M8クラスの地震が関西地方で起きている。
(いずれも甚大な被害であったことが古文書に見られる)

つまり、1,000年ぶりとも言える規模の地震であれば、
10年や20年は余震の誤差の範囲内でもあるのだから、
手遅れにならないうちに、いまこそ地震の予知・予測に、
国を挙げて取り組むべきなのである。

個人的には、まずは気象庁から独立した、
地震予知専門の機関を作るところからだと思う。

そういう目的のためなら、喜んで税金を払うのだが。