今更ながら、「酒」という漢字を「諸橋大漢和」で調べてみたが見つからない。
もしやと思い、「水」部ではなく「酉」部を探したら、そこにあった。
「岩波漢語辞典」では「水」部に載っていたけれど、
よく見ると、もともとは「酉」部三画の字、と解説がしてあった。
言われてみれば、焼酎の「酎」も「酉」だし、「酌」も「酩酊」もそう。
誰だったか忘れたが、「要」という字はもともとは「酉」+「女」で、
つまり酒の席には女が必要、なんてことを書いてた作家がいたが、
確かその作家は女性だったのでセクハラ発言とはならなかったが、
でも男の立場からすれば、酒の席には女が不要なことの方が多い気がする。
そんなことを考えながら、「諸橋大漢和」の「酒」のページを眺めていたら、
「酒光」という熟語を見つけた。
意味としては「酒の色」ということなのだが、
響きと字面が、実にいい。
確かに旨い酒というのは、色というよりも輝きが違う。
光が空気中から液体に進入する際に屈折をするのであるが、
水だと思って進入した光が、思わぬアルコールに酔っぱらい、
尋常ならざる輝きを発してしまう、などとありもしないことを考えたりする。
「酒悲」なんて言葉もある。
文字通り、泣き上戸のこと。
「酒兵」とは何のことぞや、と説明を読めば、
酒を兵に喩へていふ。共に人身を害ふからいふ。
と、分かるような分からないようなことが書いてある。
こんな具合に、本当の酒好きであれば、
たとえ酒を口にせずとも、漢和辞典の「酒」の項を読んだだけでもほろ酔い気分、、
となるのであろうが、
残念ながら、自分はまだそのレベルまでは達していないようである。
さて、「澤乃井」は地元東京の酒なので応援はしているのだが、
季節ごとに出る、企画モノっぽい酒は、あまり旨いとはいえない。
この夏の純米も、ちょっとギラギラしたカンジで甘みが強く、
脂っこい料理には合うのかもしれないが、
それならわざわざ日本酒を飲まなくても、焼酎や泡盛の方がいい。
やはり日本酒は、さらりと上品に、
口の中でも喉を通るときでも、余計な主張がないものに限る。
ちなみに「酒魔」には、
人の鼻の中で酒を飲むのを妨げる虫の意味と、
人に甚だしく酒を飲ませる魔物、という両義があるらしい。
さながら、飲むも地獄、飲まぬも地獄、ということだろうか。