映画「セブン」

 

こんな映画史上に残る傑作を、
今更ここで紹介するのもどうかと思われるかもしれないが、
そもそもこのブログは、自身の行動のアーカイヴ的に始めたものなので、
あらためてDVD鑑賞した記録としてここに記しておこう。

久々に鑑賞して、あらためて感心させられた点を挙げてみる。

まずは質感。
全体的な湿度感というか、ジメジメした感覚が、
生理的にまとわりついてくる。

この感覚を出すためだけでも、
デヴィッド・フィンチャーが「エイリアン3」を手掛けた価値はあったと思う。

次に、これは質感とも大きく関係するけども、光と音の使い方。

最初の「大食い」の殺害現場の暗さは印象的だが、
僕があらためて感心したのは、

「怠惰」の殺害現場に向かうときのパトカー内の描写で、
光が車内に差し込んで、画面が強烈に明るくなる瞬間と、
脇を、別のパトカーが通り過ぎていくサイレンの音。

何気ない場面なのだけれど、
このシーンでの、ブラット・ピットとモーガン・フリーマンの会話に、
一瞬、別な要素を差し込んで注意をそむけることで、
逆に二人のやり取りを、立体的に浮かび上がらせることに一役買っている。

そして、カメラワーク。
随所で行われる視点の変更が、実に映画的というか、
ストーリーに起伏を持たせることに成功していて、

分かりやすい例を挙げれば、
ラストシーンの荒野で、地上での視点とヘリコプター上の俯瞰視点とを、
交互に織り交ぜてクライマックスに向けての緊張感を高める所とか、

その荒野に向かう途中での、
バックミラー越しに犯人の表情をうかがうモーガン・フリーマンの視点とか、

大胆な視点の切り替えが、見る側に、
気付かないうちにハラハラ感を植え付けている。

ただ、ストーリー的な難として、
これほどまでに用意周到な犯人が、
図書館の貸し出し履歴で身元を割られるというのはあり得ないとも思うけれど、

まぁそこは、最終的には自首をして、
「七つの大罪」を完成させるのが犯人の目的だったのだから、
結果的にはどうでもいい部分なのだが。

でも欲をいえば、ここをもう少しひねってくれてもよかったのでは、と思う。

ともあれ、この作品は決して古びることのない、
濃度の高い極上のサスペンスであることは間違いない。

適正価格:2,400円(劇場換算)