主に歌舞・音曲を中心とした日本文化の流れについて、
政治経済の背景を説明しながら、
それらがなぜどのように登場したのかを考察している。
特に支配者側の体制の変化と、
それに伴って民衆の生活基盤が変わっていき、
結果的に「河原者」と呼ばれる人々を生み出すことになった流れについての説明は、見事。
『梁塵秘抄』の中に、
後世の道行につながるようなフレーズがあるという事実や、
信長・秀吉時代の堺という町が、「鉄砲」と「三味線」の二つを伝えたことが、
日本の政治・文化の大きな変革につながったということは、
この本の文脈の中で言及されると、
あらためて成程、と納得、感心してしまう。
新書という限られた文章量の中で、
ここまで濃密な文化論を繰り広げた本に接したのは、これが初めてかもしれない。
日本文化理解のためには、必読の書であろう。