反論があるのを敢えて承知で言えば、
僕の中でのクラシック音楽のピークはバッハであり、
それに近代的な意味での芸術性を加えたのがベートーヴェンであって、
そこから先の音楽史は、各ジャンルに名曲と呼ばれる作品があったとしても、
それはあくまでも、特殊化・専門化の結果でしかない。
交響曲というジャンルでいうならば、
ブラームスの1番は、ベートーヴェン以降の特殊成功事例の1つであると言っていい。
中学生以来、何十回となくこの曲を聴いてきたが、
とにかくどの演奏も「熱い」。
いやむしろ暑っ苦しくて、
それがためにブラームスを敬遠してしまう人も少なくはないだろうと思う。
ブラームスの交響曲は4曲あり(4曲しかなく)、
これも反論を恐れずに個人的見解を述べるならば、
2番・3番は退屈で、4番は尻切れトンボ、
結局は1番が一番マシだよね、
ということになるわけだが、
それにしても上に書いたように、大抵はムダにゴツゴツした演奏が多く、
40半ばに近付こうとしているオッサンが、わざわざ聴こうと思う曲でもない。
そんなわけで、もう一生この曲を聴くことはないだろうと思っていたところに、
ふとした機会でチェリビダッケの演奏を色々と探しているうちに、
この人のブラームスの1番はどんなもんじゃろ、と思って聴いてみたわけ。
それが、なんとまぁ、素晴らしいじゃありませんか!
今更この曲で褒めるべき演奏があるなんて予想もしてなかったのだけれど、
ひとことで言うならば、「大人のブラームス」。
あの熱く、ゴツゴツした印象からは程遠く、
全編に渡り、レガート&レガート。
曲が曲なので、つい盛り上げたくなる気持ちも分からないでもないが、
それでもチェリビダッケは、あくまでも冷静沈着に抑制を優先させる。
この曲ってこんなに美しかったのね、と嬉しい再発見。
フィナーレのあのホルンのソロは、
そこだけ妙に伸びやかに聴かせてちょっと嫌味になる演奏が多いのだけれど、
この演奏は、それまでがずっとレガートなものだから、
ホルンのソロにも違和感がなく、主題にもすんなり移行する。
心憎いというか、とにかく「大人のブラームス」。