138億年宇宙の旅

 

宇宙には、アインシュタインの重力理論が通用しない場面が2つある。

1つは特異点で、もう1つはブラックホール。

この「アインシュタインの穴」に俄然と立ち向かったのが、
故スティーヴン・ホーキング博士だった。

そのホーキングの教え子でもある著者が、
宇宙について現在分かっていることのほぼすべてを、
易しく解説したのが本書である。

相対性理論から始まり、量子論、インフレーション、そしてひも理論と、
構成としてはオーソドックスであり、

内容も、昨今新刊が目立つ宇宙論の本と比べて、
特に目新しい部分があるわけでもない。

けれど本書には大きな魅力がひとつあって、
それはまるでSF小説を読むかのように、

宇宙のあらゆる時代、あらゆる場所について、
読者が鮮明に想像できるような書き方になっている点だ。

「エピローグ」において著者自らが解説しているように、
それはまさしく、読者が「思考実験」をできるような仕掛けになっている。

「思考実験」といえばアインシュタインがおなじみであるが、
物理学における「思考実験」→「理論化」→「実証」という王道のサイクルを、
読者は知らず知らずのうちに体験することになるのであり、

おそらくこのような本を大学の教養課程などで用いることで、
いわゆる「理科離れ」を解消する一助になるのではないだろうか。

このジャンルの本はこのブログでも数多く紹介しているが、
分かり易さ、丁寧さという点では、この本がピカイチである。