現代の東京のあちこちに残る「色街」の名残を、
実際にそこを歩いた感想や、豊富な写真を元に語っている。
吉原、浅草、根津、深川・洲崎といった、
東京の東エリアであれば、
自分もそれなりに知ってはいたのだが、
三鷹、調布、府中、立川、八王子、武蔵新田、町田といった西エリアになると、
そもそもそこに色街があったことを知らなかったり、
たとえば立川のように「あぁ、なるほどね」と思ったり、
興味深い発見が多かった。
江戸時代に出来た場所にせよ、
あるいは戦後の米兵相手にできたものにせよ、
そこには男性の快楽がある一方、
必ず女性の悲劇があるわけで、
そういう哀しみというか黒歴史のようなものを追究しようとすると、
得てしてドロドロとした読み物になってしまうのだが、
著者はそういう場所だということを十分に踏まえながらも、
陰気になることはなく、
むしろ飾らない文体が素朴な味を出してすらいる。
乱暴に言ってしまえば、
人が集まるところには、必ず色街が形成されるわけで、
そこを歩きながら、その成り立ちや歴史、
あるいは今に残るかつての跡を辿ってみるのは、
たしかに有意義なことかもしれないと感じた。