我々は、目に見える生物ですら全ては知らないのに、
菌やウィルスになれば、なおさらである。
地球は広い。
生物学や進化学の視点でみれば、
菌やウィルスの性質と言うのはとても興味深いのであるが、
厄介なことに、それらは我々の天敵となるものも多い。
特にウィルスについてみれば、
精密機械さながらに我々の細胞や遺伝子を狙い撃ちし、
時には脳までもコントロール、
しかも変異が早いため、ワクチンの開発が追いつかない、
という、まさに無敵な存在であり、
ヒトにとっての唯一の天敵といっても過言ではない。
この本は、結核、天然痘、HIV、エボラ出血熱、ペスト、インフルエンザなど、
「天敵」と我々との闘いの歴史を描いた本である。
中には、ヒトが完全勝利をしたものもあれば、
いまだに闘い中のもの、そして原因すらよく分かっていないものもある。
もはや人類の敵は、北の将軍様でもタコのような火星人でもなく、
「見えざる小さな奴等」だということを実感できる良書であった。