「この宇宙の片隅に」(ショーン・キャロル)

 

おなじみ青土社×松浦俊輔訳の物理学の本。

「適宜自然主義」と「コア理論」を両輪に話を進めていくわけだけど、

宇宙の始まりや、進化論、宗教、哲学、最後は倫理学の問題にまで発展し、

まるで現代までの知の蓄積を全て網羅したかのような、
重厚かつ壮大な著作だ。

人智からかけ離れた「物理学の法則」があって、
それを人がどう捉え、どう解釈するのか。

世界の、いや宇宙の原理はまさにそこであって、
この本もそれが言いたかったのではなかろうか。

前半は割と物理の話が多かったので読み進められたけれど、
後半は哲学っぽい話が多くなり、若干難解になる。

副題の「宇宙の始まりから生命の意味を考える50章」というのは、
なるほどこの本の特徴をズバリ表現したものだけれども、
正直、構成というか論の展開がギクシャクしている感が否めない(特に後半)。

それを差し引いたとしても、
ここまでの分野を総合的に語れるとは、なかなかの著作だと思う。

方向感のないご時世だからこそ、
あえて宇宙や生命について考えてみるのも悪くなかろう。