タルコフスキーとソダーバーグの映画は観ていたのだけれど、原作は全然違うことを知った。
映画版の方は、人間の内面とか人間関係とか、
精神的な部分に焦点を当てていたように覚えているけれども、
原作は、そのものずばり、生命としての人間は何か、
もっといえば、生命とは何か、
というテーマに切り込んだもので、
であればこそ、系外惑星での生命体とのコンタクトという、
王道SFの形式を採ったのも納得がゆく。
作品にあらわれる「生命体」は、我々の先入観を覆すものだ。
地球では生命は海で誕生したわけだけれども、
「ソラリス」では海そのものが生命体として描かれる。
赤と青の二つの太陽のもと、さまざまな色や形に姿を変える生命としての海が、
まるで詩篇のように繊細に描写され、
その「海」に心への侵入を許した人間たちが目にする幻、
それは自分たちの鏡像であるとともに、
生命の可能性を探る、未知の生命体による実験だったともいえる。
作品中、多くの紙数を割いている「ソラリス学」についての著述は、
一見るストーリーと無関係なために読み飛ばしたくなるけれども、
実はここがこの作品の「醍醐味」だと個人的には思っていて、
物語に幅と奥行きを与える見事な演出であるし、
「ソラリス学」を通じて知るソラリスの知識と、
実際に接触することで知るソラリスの実態とが、
主人公の中で混ざり合ってゆくのも、
この作品のポイントのひとつであろう。
両監督の映画も、再度観なおしてみようと思う。