「動物たちのすごいワザを物理で解く」(マティン・ドラーニ/リズ・カローガー)

 

装幀はポップなのだけど、中身はしっかりした本。

コウモリが音波を使うこととか、ハチの巣の六角形の理論とか、
動物たちが物理を用いていることを、我々は知ってはいるけれども、

でもまだまだ世の中には、
我々の想像を超えているような動物たちがたくさんいる。

敢えてメスのフリをしてオスに抱かれることで熱を奪うヘビや、
ボクサー顔負けの強烈なパンチを打ち込めるシャコ、
水上を歩くアメンボのメカニズムや、
精密なGPSを駆使するウミガメなど、

我々人間が思いもつかないようなもつ動物たちのメカニズムを紹介する、
とても興味深い本である。

おそらく人間にだって、
この本で紹介されているような能力は、本来備わっていたのだろう。

でも我々は、それを内蔵するのではなく、
外部テクノロジーという形で所有する方法を選択した。

それが良いか悪いかは、ここでは論じない。

ただ人間が所有するテクノロジー以上の能力を、
生まれながらに備えている動物たちがいることは、

創造主に敬服すべきことであり、
科学至上主義の人間の傲慢さを、反省するきっかけとなるものでもある。

たとえば、地中を伝わる音波をコミュニケーションに用いる象の話などは、
それをそのまま地震の研究に使えるのではないかと思う。

物理法則というものがまずあり、
それを動物たちが採用していると考えるのではなく、

動物たちの能力がまずあって、
それを説明するのが物理である、と考えることで、

かなり有益な情報が、我々の科学知識として蓄えられるのではないだろうか。

(でもおそらく物理学者はそういう態度を好まない)

生物と物理という、一見遠いような分野を結び付けて考えることが、
これからの時代は重要なのであり、

そのような考えを薦めてくれるという意味で、
とても有意義な一冊だった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です