「第36回 板橋第九演奏会」(@板橋区立文化会館大ホール)

 

合唱はプロの方々ではないのだが、オケは一応新日フィルですし、
何よりも実は第九を生演奏で聴くのが初めてだったので、
足を運んでみた。

まずはこの曲についての僕の思いを。

最新の学説によると、この宇宙の誕生は、
量子的エネルギーの「揺らぎ」の中から、ポロっと生まれたとされているのだが、

第一楽章冒頭の、チェロと2ndヴァイオリンのトレモロが、
その「揺らぎ」のような神秘さと不安定さを表現しているようで、
そこからあの1stヴァイオリンの旋律が二音ずつ「落ちてくる」。

そんな宇宙の始まりの後、激動のスケルツォを経て、
アダージョに至るのだけれども、

この第三楽章は、ベートーヴェンの書いた曲の中でも、ではなく、
(大袈裟だけれども)人類の作った中で最も美しい音楽だと常々思っている。

河の流れは一見すると一律なのだが、
近くで見ると、あちこちで小さな渦があったり、
浮かんだ葉っぱが細かく動いていたりしているわけで、

この楽章も、全体の雄大な流れの中に、
細かい要素が色々と散りばめられていて、
それが曲としての厚みというか、完成度の高さに貢献している。

ベートーヴェンは「クドさ」が玉に瑕になるときがあるけれども、
ここではその「クドさ」が功を奏している気もする。

ただフィナーレについては、いただけない。

特に第一~三楽章が素晴らしすぎることもあって、
なぜ最後の楽章をもう少し良くできなかったものかと。

急に明るいマーチになったと思えば、
すぐにフーガになって、曲もしばしば分断されるし、
色々とやろうとしすぎて、まさに「クドさ」が前面に出てしまった感じ。

ただまぁそれは構成上の話であって、
構成が音楽のすべてではないといえば、その通りなわけですが。

さて、演奏については、
スケルツォの、オーボエとファゴットとホルンで奏でる、
まさに「トリオ」の部分や、

第三楽章の息の長い弦の旋律の唄わせ方とか、
(失礼ながら)思っていたよりも聴き応えがあった。

ただ、ソリスト含めた声楽パートの方は、
うーんちょっと、、まぁそれは仕方がない。

日本人は年末になると何とかのひとつ覚えみたいに第九ばっかり、、

という批判めいたことを言う人もいるけれども、

逆にいえば、年末には「必ず」名曲を聴くという風潮は、
別に悪いことではないだろう。

ということで、もう年末か・・。