「アデスタを吹く冷たい風」(トマス・フラナガン)

たまに探偵小説とかミステリー小説が読みたくなって、
でもあまりそっち方面は詳しいわけでもないので、
amazonでオススメされたこの本を。

作者のトマス・フラナガンは1923年生まれなので、
もはや古典と言ってもいいのかもしれない。

7つの短編からなっているのだけれど、
約半分は「テナント少佐」が活躍(?)する物語で、
そちらの方が味わい深い。

舞台は地中海に面した架空の国で、
革命により地位を手に入れた将軍と、

腹の中では政治的に敵対しつつも、
任務を忠実にこなすテナント少佐。

型破りで、およそ探偵小説における模範的な探偵とは遠いタイプながら、
頭脳は明晰なテナント少佐が、

不安定な国情の中で、
政治・経済の闇に発生した事件を解決するシリーズは、
最初はとっつきにくいけれども、

慣れてくると、これぞまさに「大人の短編ミステリー」といった感じで、
じわじわと効いてくる。

唸るようなトリックとかがあるわけではないが、
やや文学の香りがある、個性的なミステリーとして。