「昆虫は最強の生物である: 4億年の進化がもたらした驚異の生存戦略」(スコット・リチャード ショー)

「手のひらを太陽に」という唄があるけれど、
サビの、「手のひらを太陽に~♪」の部分、
最初に8分休符が入るんですよね。

つまり、「ン手~のひらを~太陽に~♪」ということなんだけど、
あのサビの冒頭の休符の効果は絶大なわけで、
まさにこの曲は、ひとつの休符のお蔭で、
名曲になっているといっても過言ではない。

いや、別に言いたかったのは譜面の方ではなく、
歌詞の方でした。

ミミズだって、オケラだって、アメンボだって~♪
みんなみんな 生きているんだ ともだちなんだ~♪

だがしかし、ミミズ先生やアメンボ先生に向かって、
「ともだち」なんて畏れ多いじゃありませんか。

彼ら節足動物たちは、
我々脊椎動物の祖先よりもずっと前に、
リスクを冒して地上へ進出し、

さらには水中や空中にも生活圏を広げ、
おまけに完全変態やら、寄生やらの驚くべき術を身に付け、

数はもちろん種の数でも生物ナンバーワン、
まさに地球は「昆虫の星」であるといっても差支えない、
というより、地球は「昆虫の星」なんです。

では果たして、昆虫はいかにして生物の王者となったのか。

生物の進化の歴史を昆虫中心の視点で捉え直し、
その中で、彼らの体や生態のメカニズム解説していくという、
意欲的な一冊。

この一冊を読み終えたあなたは、
床や壁を這いまわるゴキブリでさえも、
愛おしく思えてくることでしょう。

ただ、著者の専門外の生物の進化について語った部分は、
若干疑問符が付くところもあって、

たとえば、なぜ恐竜が鳥へ進化する際に羽毛を獲得したのか、
を説明した部分では、

彼らが前肢をバタつかせて虫を捉えやすいために、
羽毛が発達した、

と説明しているが、
さすがにそれは「昆虫史上主義」と言わざるを得ないけれども、

いわゆる「一般的な」進化の歴史を学んだ人にとっては、
新鮮な視点を提供してくれる本であるには違いない。