久しぶりに種村季弘の文章を読んでみて、
どことなく内田百間に似ているな、と思った。
そういえば、二人とも東大のドイツ文学科卒業。
たとえば中国文学を専門にしている人の文章に、
独特の語り口があるのは知っているが、
もしかしたらドイツ文学にも同じことがいえるのか?
・・・でもとりあえずサンプルは2人だけだから、
うっかり一般化はできない。
ともあれ、どちらも僕好みの人を喰ったような文章で、
ぱっと見脱力系っぽいんだけれども、
読めば読むほど深みを感じられるという不思議な特徴がある。
この本は、
動物、運、物、暦、食、呪
という章立てで、各種の迷信について、
古今東西の文献やエピソードをベースに、
興味深く紹介したエッセイ。
動物の章では、明治初期にウサギが投資対象だったことや、
絵馬の起源、狐を使った奇術について、
運の章では、媚薬の使い方といったエロチックな内容から、
鬼門はどのように誕生したかについて、
暦の章では、ご存知十三日の金曜日についてのあれこれや、
厄年に潜む人生観について、
などなど、
いかにもこの著者らしく、
博学でありながらもそれをひけらかすことなく、
自然に知的好奇心を充足させてくれる。