なんやかんやで、もう40年間もクラシック音楽と過ごしてきて、
最近では「弾く」専門で、「聴く」方はご無沙汰なのだけど、
秋の夜長、というにはまだ暑さの残るこの時期、
珍しくyoutubeで演奏動画を何本か視聴してみた。
クラシック音楽というのは再現芸術なわけで、
曲そのものの良し悪しに加え、
それをどう演奏するか、というところが鑑賞のポイントとなる。
「皇帝」は、名曲揃いのベートーヴェンの中でも、
特に好きな曲のひとつでもあるし、
バレンボイムのベートーヴェンは、
(賛否両論あるだろうが)あれはあれで筋が通った解釈だと思うし、
ということで、
彼の弾く「皇帝」をじっくり聴いてみようと思った次第。
まず聴いたのは、2007年のLIVE。
バレンボイムという人は器用なので、
指揮&ピアノぐらいはお手の物なのだが、
でもやはり、協奏曲は「競争曲」でもあるわけで、
指揮者兼ソリストが、全権を統べるというのは面白くなく、
熟練の指揮者とソリストの、
文字通り「競争」の中に、独特の緊張感が生まれるのだと思っていて、
そういう意味で、この演奏は、
悪くはないのだけれども、調和的というか、面白くないのである。
と思って別の動画を探していたら、あった。
クラウディオ・アバド指揮のベルリンフィルとの、
1994年の競演である。
単純にバ氏が若かったということもあるだろうが、
2007年のものと比べ、とにかく「キレ」がある。
特にフィナーレのテーマにおけるピアノのアクセントの付け方が、
この曲にふさわしい、躍動感を見事に表現しているし、
やはりこのレベルの曲になると、
ピアニストはピアノに集中すべし、というのが、
二つの動画を見比べるとよく分かる。
でもあらためて思うことは、
アバドという指揮者は偉大だったんだなぁと。
何より指揮の姿が端正だし(ここは重要)、
演奏する側からすると弾きやすいことは間違いない。
しかも、曲の解釈が明解で変わりやすい。
なのでこの演奏も、基本的には、
アバドの意向にバレンボイムが従ったのではないかと思うわけで。
でも随所にバ氏らしさも顔を覗かせるので、
まさにそこが「競争曲」の醍醐味なんです。
そんなこんなでニヤニヤしていたら、
もう3時か・・・。
明日は土曜日といえども、そろそろ寝よう。