「変人」が多い音楽家の中でも、
ミケランジェリというピアニストは、
筋金入りの「変人」だったのだと思う。

でも、あの深いタッチ、
それでいて重くなりすぎず、むしろ流麗であり、
歯切れのよいリズム、
そして何よりもあの磨きのかかった音色、

久々に聴くと、
やはり僕はこのピアニストが大好きである。

そして「皇帝」は、このピアニストの特徴を活かすのに、
うってつけなのではないだろうか。

ジュリーニ指揮のウィーン交響楽団、
例の、カルロス・クライバーとの共演を予定していたが、
仲違いしたために変更になった、というライブだろう。

現代風の派手な(?)演奏を聴き慣れている人からすると、
この演奏はつまらなく感じるのかもしれない。

第一楽章の展開部とか、
もっと速度を上げてもよいところも、
むしろ落ち着いて堅実に進めていくのだが、

でも細部における微妙なリズムの取り方が絶妙であるため、
ちっとも重く聴こえないから不思議である。

フィナーレの冒頭、独奏でテーマを奏でる部分を聴いたとき、
あれ?今までの良さが消えてしまったのでは、、と思ったのだが、
すぐにそれは杞憂だと分かった。

進むにつれて、何とも活き活きと、
誤解を恐れずに表現するならば、
「茶目っ気たっぷりと」した演奏を聴かせてくれている。

そして何よりも、やっぱりジュリーニは良い指揮者ですね。

それでいてアクが強くないので、
オペラやコンツェルトの指揮は適任なのだと思う。

深いのだけれど、重くない。
これぞ「皇帝」という名演だと思う。