10月も、まもなく下旬になろうとしている。

予定どおり、バッハの『平均律第2巻』は、
5番のフーガに取り込み中。

プレリュードが、主音のオクターブ⇒スケール⇒アルペジオという、
驚くべきシンプルな冒頭なのに対し、
フーガも負けじと、何と主音の三連打で始まる。

でもそこからの展開が、バッハ恐るべし。

4声のフーガなのだけれども、
各声部に、この主題が惜しげもなく、
被さるように登場してきて、
それが絶妙な高揚感を生み出しているんだよなぁ。

弾くのは決して簡単ではないが、
音楽の楽しみというか、フーガの巧妙さというか、
とにかく、これを弾けてよかった。

そして、以前の記事にて、
10月から、新曲に取り組むと予告していたのは、
悩んだ挙句、ベートーベンの31番のソナタにした。
ベートーヴェン「ピアノソナタ第31番」

第一楽章から美しすぎるわけなのだが、

Moderato cantabile molto espressivo

っていう指示が、
作曲家のこの曲に込めた想いを代弁しているようで、
とにかく、痺れる。

変イ長調の柔らかな導入部に続く、
童心に帰ったかのような第一主題、
そして雫が流れ落ちるような分散和音、
それが高まったところで始まる、レガートな第二主題。

高度なテクニックは要求されないものの、
音の粒を意識しなければならないというか、

基本的には、ひたすら内面的な音楽なわけで、
言葉にできないレベルの難しさが、ここにはある。

まだやっと第一楽章を最後まで弾き終えたぐらいだが、
来年の春ぐらいまでにはマスターしたい、
というか、これは一生モノの曲だろう。

どんなにその日の仕事が忙しくても、
この曲を弾ける喜びで帳消しにできる。