毎年12月に恒例になった国内温泉旅行。
今年は島根県の玉造温泉と松江しんじ湖温泉へ、
2泊3日で行ってきた。
山陰は近距離に2つの空港があるのだが、
米子鬼太郎空港はANA、出雲縁結び空港はJAL、
(これらのネーミングについてはさておき、、)
今回は旅のプラン的に後者を利用することにした。
羽田を発ち、この日のためにKindleにダウンロードしておいた、
『出雲国風土記』を読んでいると、一時間ほどで飛行機が降下、
それまでの空が嘘のように、一面雲の中へ。
下から湧き上がるような雲を窓の外に眺めながら、
これぞまさに「八雲立つ出雲」なのだと、
妙に納得させられた。
飛行機の到着が遅れてしまい、
慌ててバスに乗り込んだものの、
通常ならば、玉造温泉まで30分足らずで着くところが、
事故渋滞に巻き込まれてしまい、一時間強、
宍道湖の南岸に沿って、
西から東へ湖の横幅の半分ぐらいを進み、
着く頃にはすっかり日が暮れてしまっていた。
『出雲国風土記』によれば、
かつてこの地で国造が、朝廷に捧げるための神聖な玉、
いわゆる勾玉の類を作っていたとのことであり、
温泉については、次のように記されている。
男も女も老いたるも少(わか)きも、
或は道路に連なり、或は海中を洲に沿ひて、
日に集ひ市を成し、まがひて宴す。
ひとたびすすげば、形容(かたち)端正(きらきら)しく、
再び湯浴みすれば、よろづの病ことごとく癒ゆ。
古より今に至るまで、験を得ずといふことなし。
故、俗人(くにひと)、神の湯という言ふ。
一回入ればお肌がツルツルで、
もう一回入ればどんな病気でも治るということで、
玉造温泉の評判の高さは古代だけではなく、
現代も、中心を流れる川の両脇に、
所狭しと宿がぎっしりと並び、
西日本を代表する温泉街として、
かなりの繁華がうかがえた。
この日お世話になったホテルも、
かなりの宿泊客で賑わっていたわけだが、
チェックインして通された部屋の名前が、
なんと「李白」。
ご存知のとおり、
李白といえば酒好きで知られた詩仙。
これはまさに飲まねばならぬという暗示のようで、
この地においてスサノヲに酔わされた八岐大蛇さながらに、
酔って眠って粗相があっても、
我が身からは草薙の剣などは出るはずもないが、
まぁそれなりに呑もうという決意を固く。
お湯の良さについては、触れるまでもなく。
今回、初の山陰旅行では、
食についてもかなり楽しみにしていたわけで、
期待にそぐわぬ山の幸に海の幸、
のどぐろの煮つけに島根和牛、そして松葉ガニと、
合わせたお酒は地元の赤ワイン。
アルコール度数は12度なので、
これがイタリアンやフレンチ相手だとパンチ不足なのだが、
こういう料理であれば相性抜群、
湯上りの乾いた喉のせいもあり、
あっという間に一人で一本、
部屋に戻ってさらにミニボトルを注文し、
一杯一杯復一杯
我酔欲眠卿且去
という李白先生の詩さながらに、
その夜は更けてゆく。
大事なことを書くのを忘れていた。
島根の民謡といえば、安来節(やすぎぶし)。
あの撥の両耳部分に鼈甲を使った、
独特な三味線の撥で有名(?)なわけだが、
山陰地方だからという勝手思い込みで、
もっと暗い曲だと思っていたのだが、
この日聴いた限りでは、かなりポップで楽しい民謡だった。
それが「銭太鼓」や、
あの「どじょうすくい踊り」と結び付くことで、
民衆芸能としてのエネルギーを増幅させているのを、
身近に体感することができた。
滑稽で憎めないどじょうすくい踊りを見ながら、
この芸はもしかしたら、出雲神話のトリックスターともいえる、
「大国主命」をモデルにしているのではないかと、
本気で考えてみたのだが、
その「大国主命」が鎮座されます出雲大社へは、
次の日に訪れることになっている。