文化史、経済史、政治史、
というレベルで、
世界史を語ることはできるけれども、
例えば、
音楽史、絵画史、読書史、
では「世界」は語れない。
だが、酒は違う。
酒は、この地球上に生まれて以来、
万人を熱狂させ、
時には権力と結びつき、
時には人々の争いを招き、
そして何よりも、
常に人々の生活の、
「ほぼど真ん中」にあった。
しかし酒が人を酩酊させることは、
利点であると同時に弱点でもあり、
人を酔わせることなく、
高揚感を得られることができるもの、
それはコーヒーであり、
お茶であり、コーラであった。
この本は、それら、
ビール、ワイン、蒸留酒、
コーヒー、茶、コカ・コーラが、
いかにして生まれ、
いかにして人々に広まったか、
を紹介しつつ、
読書の側は、
気付いたら世界史全体を、
学んでいることになる、
そんな本だ。
ビールが古代王権を確立させ、
ワインがギリシャとペルシアとの戦争のきっかけとなり、
ラムやブランデーが奴隷貿易と結びつき、
コーヒーがフランス革命を呼び、
茶が合衆国の独立を促す。
そして、コークは、
言わずと知れた「強いアメリカ」の象徴。
こう書いただけでも、
これら6つの飲み物が、
世界の歴史において、
どれほど重要な役割を担ったきたかが、
お分かりいただけると思う。
いや、歴史があって、
これらの飲み物が存在したわけではなく、
これらの飲み物があって初めて、
歴史というものが動いたのではなかろうか。
単に歴史を学ぶだけではなく、
「モノの見方・視点の妙」
を教えてくれる好著。