トム・スタンデージ 著、「歴史を変えた6つの飲物」(楽工社)
文化史、経済史、政治史、
というレベルで、
世界史を語ることはできるけれども、

例えば、
音楽史、絵画史、読書史、
では「世界」は語れない。

だが、酒は違う。

酒は、この地球上に生まれて以来、
万人を熱狂させ、
時には権力と結びつき、
時には人々の争いを招き、

そして何よりも、
常に人々の生活の、
「ほぼど真ん中」にあった。

しかし酒が人を酩酊させることは、
利点であると同時に弱点でもあり、

人を酔わせることなく、
高揚感を得られることができるもの、

それはコーヒーであり、
お茶であり、コーラであった。

この本は、それら、
ビール、ワイン、蒸留酒、
コーヒー、茶、コカ・コーラが、

いかにして生まれ、
いかにして人々に広まったか、
を紹介しつつ、

読書の側は、
気付いたら世界史全体を、
学んでいることになる、
そんな本だ。

ビールが古代王権を確立させ、
ワインがギリシャとペルシアとの戦争のきっかけとなり、
ラムやブランデーが奴隷貿易と結びつき、
コーヒーがフランス革命を呼び、
茶が合衆国の独立を促す。

そして、コークは、
言わずと知れた「強いアメリカ」の象徴。

こう書いただけでも、
これら6つの飲み物が、

世界の歴史において、
どれほど重要な役割を担ったきたかが、
お分かりいただけると思う。

いや、歴史があって、
これらの飲み物が存在したわけではなく、

これらの飲み物があって初めて、
歴史というものが動いたのではなかろうか。

単に歴史を学ぶだけではなく、
「モノの見方・視点の妙」
を教えてくれる好著。