デビッド・クアメン 著「エボラの正体」(日経BP)
COVID-19という、
パンデミックを経験した我々には、
ウィルスについてある程度学ぶ義務がある。

エボラウィルス病(エボラ出血熱)は、
パンデミックには至らなかったけれども、

新型コロナ同様、
「人獣共通感染症」として、

多くの犠牲者を出したことは、
いまさら語るまでもない。

アフリカの国々に赴き、
被害者の家族にインタビューするなど、

エボラウィルスの実情と、
その恐怖について、

いきいきと伝えてくれるのが、
この本だ。

我々人類は、
天然痘ウィルスの撲滅には成功したが、

天然痘ウィルスは、
そもそも人獣共通ではなく、

ヒトにのみ伝染するウィルスであったため、
封じ込めやすかった。

けれども、
エボラウィルスを始め、

我々を脅かす多くのウィルスは、
人獣共通であるため、

その保有宿主である動物は何なのか、
そしてそれがどうやってヒトに感染したのか、
ということが、

まさに議論の争点になるわけで、
この本もまた、そこに重きを置いている。

エボラの保有宿主は、
コウモリであると考えて間違いなさそうだが、

この本が書かれた時点では、
まだそれが明確になっていない。

新型コロナも、
おそらくはコウモリが宿主であろうと思われるが、

いずれにせよ、
それまで宿主である動物と共存していたウィルスが、

ヒトに被害をもたらすようになったのは、
自然破壊や動物乱獲など、
ヒト側に原因があることは間違いないわけで、

今回のコロナ・パンデミックを通じて、
我々は今一度、

ヒトと自然との関係について、
真剣に考えてみるべきなのではなかろうか。

地球はヒトのためにあるわけではない。

ヒトが繁栄する前から、
ウィルスはその他の動物と共存してきた。

それがヒトに恐怖を与えることについて、
「被害者」という立場ではなく、

別の視点で見直すことの必要性を、
この本は教えてくれていると思う。

最後に。
この本が書かれたのは、
COVID-19パンデミックの前なのだが、

途中で引用されている論文の、
下記の部分が、印象的である。

ウィルスの特性分析ではなく、
ヌクレオチド配列の分析に重点を置いた結果、
いや、時にはそれだけしか見なかった結果、
我々は研究すべき本物のウィルスを得る代わりに、
ただひたすら自己満足の道を歩き続けてきたのである。
(中略)
ウィルスがどのように活動するかを知りたければ、
昔からの方法で病原体を培養し、
それらがどのように作用するかを理解したければ、
実物で観察しなければならない。
(中略)
もしそれを怠れば、
破壊的な人獣共通感染症ウィルスの大流行が次に起こるのを、
我々は指をくわえて待つだけだろう

実際、「破壊的な人獣共通感染症ウィルスの大流行」は、
起きてしまった。

果たしてその裏に、
ヌクレオチド配列云々という、
研究側の姿勢の問題があったのかどうかは、

門外漢の我々には
知るすべもない。