6楽章×6曲、
偉大なる楽曲の構成に倣った36章で、
バッハ、そしてこの曲をまさに「蘇らせた」、
巨匠・カザルスの伝記、
そして現代を生きる著者によるバッハ体験、
を綴った本。
著者はもともと、
ロックやポピュラー音楽のライターらしく、
ある日、
組曲一番の前奏曲をライヴで聴いたことで、
バッハの音楽にのめり込んだのだという。
チェロを習い始め、
カンタータの合唱を学ぶ合宿に参加するなど、
著者のバッハ愛を存分に感じながら、
偉大なる作曲家と、
巨匠の伝記を交互に読めるという、
この本の構成をまずは、
大いに讃えたい。
バッハとカザルスの伝記部分は、
特に目新しい内容はないのだと思うが、
何よりも著者が、
いわゆる「バッハ専門家」ではないだけに、
その視点の新鮮さと、
文章の読みやすさ(翻訳も素晴らしい!)により、
魅力溢れる一冊に仕上がっている。
この曲について語りたいことは山程あるが、
この本を紹介するという趣旨とズレてしまうので、
敢えて控えよう。
チェロという楽器一台だけで、
オーケストラにも勝る世界を表現できるという、
その素晴らしさを、
衒うことなく表現した著作として、
僕の中では◎としたい。