この著者でこのタイトル、
ワクワクして読み始めたのだが、
内容は想像と大きく異るものだった。
この本のテーマは、
科学倫理というか、
科学者が政治、特に軍事からの誘惑・圧力に、
どのように対処すべきか、
というもの。
日本学術会議の問題は、
まだ記憶に新しいが、
科学者が政府の言いなりになると、
間違いなく軍事利用されるというのは、
我が国の歴史を振り返るまでもなく、
現に、それが海外では、
当たり前になっていることを見ても、
分かる。
政府が大学の予算を抑え込む一方、
米国や防衛省が研究費をチラつかせるという、
科学者にとってみては、
地獄で仏に会ったような事態が起きており、
そしてその誘惑に負ける研究者が多いという現実を、
団体や大学の具体例を挙げながら、
本書では明らかにしている。
もちろん研究者側にも言い分はあるわけで、
おそらくこの問題は、
客観的な正解が存在するわけではなく、
まさに科学「倫理」なのであり、
科学者ひとりひとりに、
戦争と科学の共存に対する姿勢を、
問われているということなのだろう。
後半3分の1ぐらいは、
江戸時代に、専門外でありながら、
堂々たる宇宙論を述べた、
山片蟠桃や志筑忠雄について、
そして著者のライフワークでもある、
寺田寅彦に関するエッセイ。
僕なんかよりも、
研究者を目指す理系の学生が、
読んだ方が有益なんだろうな。