正月(むつき)たつ 春のはじめに かくしつつ
相(あひ)し笑(ゑ)みてば 時じけめやも
『万葉集』巻第十八に収められた、
大伴家持による正月の宴会時の歌。
こうしてお互い笑顔でいられるのは、
まさに一年の始めの正月だからだね
という意味なのだが、
最後の「時じけめやも」というのが、
少々難解で、
「時じ」というのは、
時節にふさわしくない、とか、
KYだ、という意味で、
「けめやも」は反語を表すから、
「時節にふさわしくないことはない」、
つまり、「時節にぴったりだ」ということになる。
本来、正月は親戚や友達と顔を合わし、
笑いながら酒でも飲むものなのだが、
コロナ禍の今は、
それはまさに「時じ」かもしれず、
来年の正月こそは、
「相し笑みてば 時じけめやも」
と堂々と言える世の中になってほしいものである。