ジャン=バティスト・マレ 著「トマト缶の黒い真実」(太田出版)
世界に広く流通している、
「イタリアをイメージした」トマト缶が、

実は中国で生産されている、
という事実を、

各所への取材を中心に、
ドキュメンタリー風に描いた一冊。

トマトといえば、
反射的に思い浮かべる「赤」という色を、
逆手にとったタイトルからして、
まず秀逸。

そして、そのトマトを栽培・収穫する、
新疆ウイグル自治区や、
それを加工する天津の工場、

さらにそれを販売するイタリアの商社に、
それを購入する国の事情などなど、

とにかく現地に足を運び、
断られようと怪しまれようと、

徹底して取材にこだわる、
ジャーナリズム精神が素晴らしい。

この本でも言及されているが、
中国経済の原動力の一端は、

新疆ウイグル自治区の、
安い労働力であることは間違いないようで、

中国と熾烈な経済戦争を繰り広げる米国が、
新疆ウイグル問題に介入するのも頷ける。

ただ、その米国の経済を、
牽引してきた企業のひとつであるハインツすらも、

中国産のトマトに頼っているというのは、
皮肉ではあるが。

その他、
イタリア経済におけるマフィアの存在など、

トマト缶という、
どの家庭でもありふれた商品を題材として、

世界経済の構図を描いた、
なかなかの力作であった。

※まぁ、確かに、
業●スーパーとかで売られている、
やけに安いトマト缶が、
イタリア産のわけがないんだよな。

缶詰はイタリアでしていたとしても、
その中身は、、ってこと。