映画『オデッセイ』(マット・デイモン主演)の原作となった、
『火星の人』の作者によるSF長編。
あまり詳しくないのだけれど、
「ハードSF」っていうのかな?
工学、力学、生物学、進化学、
気象学、熱力学、化学…
とにかく、科学の各分野にわたる、
ディテールのこだわりがハンパない。
ストーリーとしては割と単純で、
太陽に生じた異変を解消するための、
カギを握る物質を探るために、
系外太陽系に向けて、
孤独な宇宙探査をするという、
まぁ、よくある話。
ただ、主人公は冒頭から、
いきなり記憶喪失で、
宇宙航行を続けながら、
徐々に地球での記憶を取り戻す、
つまり、現在と過去が入れ子になって、
ストーリーが進むというのが、
飽きさせないというか、
謎解きにも似たワクワク感を味わえる。
既に映画化も決定しているらしいが、
とにかく細かい科学的な描写を、
どこまで削ぎ落せるか、
というのが見所になりそうだが、
逆にその部分を除いてしまうと、
それほどストーリーに厚みはないんだよなぁ。
まぁ、異星生物とのちょっとした感動があるのと、
映像の美麗さで、
そこそこの作品にはなるだろうけれど。
小説にはもちろん映像美はないので、
科学的ディテールを楽しめないと、
正直、魅力が半減かも。
あ、あと科学だけじゃなくて、
エイリアンの言葉を学ぶ過程を描く、
言語学的要素もありますね。
結論としては、
読み応えは十分すぎるけれども、
読む人を選ぶ作品です。