アンディ・ウィアー 作「プロジェクト・ヘイル・メアリー」(早川書房)
映画『オデッセイ』(マット・デイモン主演)の原作となった、
『火星の人』の作者によるSF長編。

あまり詳しくないのだけれど、
「ハードSF」っていうのかな?

工学、力学、生物学、進化学、
気象学、熱力学、化学…

とにかく、科学の各分野にわたる、
ディテールのこだわりがハンパない。

ストーリーとしては割と単純で、

太陽に生じた異変を解消するための、
カギを握る物質を探るために、

系外太陽系に向けて、
孤独な宇宙探査をするという、

まぁ、よくある話。

ただ、主人公は冒頭から、
いきなり記憶喪失で、

宇宙航行を続けながら、
徐々に地球での記憶を取り戻す、

つまり、現在と過去が入れ子になって、
ストーリーが進むというのが、

飽きさせないというか、
謎解きにも似たワクワク感を味わえる。

既に映画化も決定しているらしいが、
とにかく細かい科学的な描写を、

どこまで削ぎ落せるか、
というのが見所になりそうだが、

逆にその部分を除いてしまうと、
それほどストーリーに厚みはないんだよなぁ。

まぁ、異星生物とのちょっとした感動があるのと、
映像の美麗さで、
そこそこの作品にはなるだろうけれど。

小説にはもちろん映像美はないので、
科学的ディテールを楽しめないと、
正直、魅力が半減かも。

あ、あと科学だけじゃなくて、
エイリアンの言葉を学ぶ過程を描く、
言語学的要素もありますね。

結論としては、
読み応えは十分すぎるけれども、
読む人を選ぶ作品です。