リディア・パイン 著「ホンモノの偽物」(亜紀書房)
「パクリ」なんだけど、
クオリティがめっちゃ高いとか、
それ自体に価値があるとか、

そういう「ニセモノ」を、
「ホンモノの偽物」と定義し、

果たして、
ホンモノとニセモノの境界はどこなのか、

ニセモノとは本当に悪なのか、
というのが、本書のテーマ。

テーマ自体はそれほど珍しくないのだけれど、
て紹介されているエピソードが、
それぞれなかなか興味深い。

分かりやすい例でいえば、
たとえば人工タイヤモンドは、

元素レベルでいえば、
天然ダイヤモンドと同じだし、

素人目で区別をすることは、
まず不可能。

しかも、天然ダイヤモンドにまつわる、
ブラックでブラッディな倫理的悪もそこにはない、
いわば「クリーンなダイヤモンド」であるわけだが、

ニセモノといえば、ニセモノであるわけで、
これをどう評すればよいのか。

その他、ホンモノの果物とそっくりな味・香りで、
我々を楽しませてくれる人工フレーバーや、

実物の歴史遺跡を保護するために、
精巧に作られたレプリカ、

動物を撮影したドキュメンタリー映画、
などなど、

「ニセ札」のように、
明らかに利益だけを目的に、
人を騙すためのものではなく、

そこに何らかの意義が込められた、
「ニセモノ」をどう考えるべきなのか。

物事を眺める際の、
視点の多様性について、
考えさせてくれる一冊だった。

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