「利己的な遺伝子」(リチャード・ドーキンス)
効率的な読書というのは、ちょうど進化の系統樹と同じで、
興味のある「枝」を見つけたら、

そこから連なる「知の河」を系統的に下って(上って)ゆくのだろうが、
僕は幸か不幸か雑食性なので、
あっちへフラフラ、こっちフラフラ、
いつまで経ってもひとつの分野を深堀することができず、

「知の種」の数は多いかもしれないが、
「知の進化」がままならぬ状態である。

この分野での金字塔ともいえる、この「利己的な遺伝子」を読んだのはだいぶ前だ。

自分史においては、何度か「焚書」ならぬ「捨書」、あるいは「売書」という時期があったので、
当然ながらこの本も、いまの本棚にはなかった。

そこで珍しく、ピンポイントでの目標を定めて古本屋を巡り、
再び我が手に収めることになった。

560円。
得られる知識と、喚起される興味の代価としては安すぎるであろう。

雑食性読書ながら、かつて読んだときよりは、
この分野における知識は深まっていたようで、
当時理解できなかったことも、すんなり腑に落ちてくれる。

以前から、人間の行動には脳にも理解できない部分があるということを知っていたので、
それがどうやら遺伝子のせいである、ということを確信できた。

しかもドーキンスは、「生物の行動は、遺伝子によってプログラミングされている」と明言しており、
これがそのままこの本のテーマでもある。

豊富な実例と、深い考察に溢れていて、しかも退屈させない。
「知的なエンターテインメント」とは、こういうことなのかな、とも思う。

残念ながら、遺伝子の自己中心主義にあまりにもページが割かれすぎていて、
それが進化にどのように影響してきたかについての言及が、
若干物足りない気もした。

それはドーキンスの他の著作への楽しみにとっておこう。