「『江戸しぐさ』完全理解」(越川 禮子 林田 明大)

 

一時話題になった「江戸しぐさ」と、
江戸時代に広まった陽明学について述べ、
両者を結び付ける、というのがこの本の趣旨。

陽明学のモットーは「知行合一」だから、
別に「江戸しぐさ」でなくても、何にでもあてはまる。

だからこの両者を結び付けるというのは、
かなり強引な気がしないでもないが、

江戸という時代・都市には、これらの価値観が存在していた、
ということを再認識するには十分だろう。
(「江戸しぐさ」なるものが、本当に実在していたならば、であるが。)

もちろん学術書ではないし、
敢えて言うならば、道徳の教科書を読んでいるような印象。

ところで「知行合一」というのは、
頭で認識すると同時に(もしくはそれより前に)、自然と体が動いて行動する、
という理念なわけだが、

これは、脳が行動に対する信号を出すより前に、
体の方が動き出している、という人体についての謎を想起させる。

これは脳とは別に人間の行動を司っている器官があり、
脳はそれに対する抑制装置なのではないか、というのが、養老孟司先生なんかの説なのだが、

僕はそれは遺伝子の仕業ではないかと思っているわけで、
遺伝子に組み込まれたプログラムは、おそらく我々の想像をはるかに超えて、
精巧かつ巧妙なのではないだろうか。

そして、この脳と行動の分離という現象に気付いていたということが、
王陽明の偉大さである。