いわゆる『吶喊』と呼ばれる、魯迅の短編集。
中国近代文学を代表する作家ではあるが、
教科書に載っているイメージが強く、
そういう純文学的なものはめっきり読まなくなっていた。
ただ最近、「食人」について調べる中で、
『狂人日記』が食人をテーマにしているということを知り、
急に読みたくなったというわけ。
基本的には、古臭いというか、説教臭いというか、
お世辞にも面白いとは言えないものが多いのだけれど、
中にはいくつか、
あれ?これは漱石か百間の小品ではないのか?と思わせるような、
キラリと光るものもあった。
それらを読んだあとで、
「つまらない」と退けてしまったものに再度目を通してみると、
20世紀初頭、清末~中華民国時代の中国の、
土臭い農村の生活や、エリート層の悲劇、
古きものと新しい文化との対立などといったテーマが、
妙に生き生きと、
視覚だけではなく聴覚や嗅覚を刺激する形で再現されるようで、
なるほど、これが文学というものか、と今更ながら感心させられるのである。