「時間の言語学: メタファーから読みとく」(瀬戸 賢一)

「時間」という言葉の意味・用法から、
時間と我々との関係性について考察した本。

言葉の意味そのものから、
「時間とは何かについて」語るというのは新鮮ではあったものの、

特に後半、
「時間はお金」「時間は命」というメタファーを説明するあたりは、
ちょっとクドいかな。

あと、どうしても気になることがある。

著者は、「時間は流れ」であるとした上で、

・時間そのものは、未来から過去へ流れる(A)
・我々は過去から未来へと進む(B)

という2種類の時間があるとしているが、
それは違うのではなかろうか。

そもそも、時間というのは絶対的な存在ではなく、
認識の結果として存在しているものであり、

上の例でいえば、あるのはただ「B」のみで、
我々が過去から未来へと進むから、

あたかも「A」の時間があるかのように、
つまり、時間は未来から過去へ流れるかのように、
「相対的に感じる」ということではないのか。

さまざまな文献や辞書における「時間」の事例を考察していくというのは、
読んでいてワクワクさせられたのではあるが、

結局、時間とは何か、に迫るわけでもなく、
なぜことさら「時間はお金」というメタファーにこだわるのかもよく分からず、

いろいろな意味で惜しいと思った。