「138億年の人生論」(松井 孝典)

日本を代表する惑星物理学者による人生論。

人生論といっても、仕事や健康や教養など、
さまざまな内容について断片的に語ったもので、

正直、著者に馴染みのない人にとっては、
あまり面白くない本なのかもしれない。

逆に、著者の学説を知っている人からすれば、
学問上の思考と、日常生活における信条とのつながりを
知ることができるこのエッセイには、
心に響くものもあるのではないだろうか。

とはいえ、
特別鋭い考察があるわけでもなく、
ユーモラスな内容であるわけでもなく、

やはりこれは「松井ファン」向けの本で、
一般向きではないのかな。

個人的に印象深かったのは、
最近の人たちは「問いを立てるのが下手だ」という一節。

これは僕も、職場で年下の人たちと仕事をすると感じることなのだが、
今の時代、Googleで調べれば、すぐに答えやヒントが出てくる。

だから若い人たちは、答えはすぐに出さなければいけないものだと、
思い込んでいるように思われてならない。

けれども、問題を解決するためには、
さらに別の「問い」を立てる必要があり、

その「問い」を解くためには、
またさらに別の「問い」と立てる必要があるといった、

パッと見、遠回りであるかのように思われる、
筋道だった思考をしなければ、

真の解決には辿り着けないのだということを、
知らない人が多い。

過程よりも結果重視ということなのだろうが、
すぐれた結果には、実はすぐれた過程が隠れていることに、
気付かないのであろう。

・・・なるほど、
こうやって自分の身の回りに置き換えて考えることができるということは、
この本が僕にとっては有益だったということに違いない。