生まれ育った場所(落合)が、
火葬場に近かったこともあり、
子供の頃から、霊柩車には、
何となく愛着(?)のようなものがある。
いや、愛着は言い過ぎで、
「見慣れている」というレベルかもだが、
いずれにせよ、
あの独特の見た目には、
奇異とも敬虔ともいえない、
独特な感覚があったように思う。
僕が見慣れていたのは、
車体の後ろ半分が、
山車や神輿のようになっている、
この本でいうところの、
「宮型」ってやつなのだが、
あの奇天烈なデザインの車が、
なぜ、どのように誕生し、
そして現在廃れつつ理由等を、
考察するのが、この本の主旨である。
当然ながら、
本書の内容としては、
明治、大正、昭和における、
「葬儀」あるいは「死」に対する、
人々の価値観の変化、
が中心となるわけだが、
それを「霊柩車」という視点で捉えるというアプローチが、
斬新であり、興味深い。
おそらく「他者に対する無関心」、
で済みそうな箇所を、
葬儀の聖性の低下、
というような大袈裟な(?)理由を付けるなど、
考察部分にはちょっと?な部分も、
ないわけではないが、
霊柩車の歴史という、
事実自体を知ることができる意味では、
価値がある一冊と言えそうだ。