宮入 恭平 編著「発表会文化論:アマチュアの表現活動を問う」(青弓社)
アマチュア音楽愛好家にとって、
「発表会」という存在は、
避けて通れないテーマである。

それは別にピアノやヴァイオリンなどの、
クラシック音楽に限らず、

バレエでも長唄でも日本舞踊でも、
ライブハウスでのバンド演奏でも、
また、美術展であっても同様だ。

要するに、

アマチュアが「(決して安くはない)お金を払って」、
人前で芸を披露する

というのが発表会の定義となるのだろうが、

そこには様々な根深い問題が、
横たわっているだろうことは、

一度でも発表会に関係した人であれば、
多かれ少なかれ感じているはずで、

その問題について、
様々な角度から考察したのが本書である。

海外との比較や、
家元制度への言及など、
かなり興味深く読むことができたが、

ただ惜しむらくは、
本書の出版が2015年であり、

その後急激にメジャーとなった、
「youtubeでの芸の披露」という、

従来までの「発表会」の延長線上にありながら、
無料でかつ不特定多数に発信できるという意味で、

新たな発表会の形を切り拓いた、
このメディアへの分析がされていないこと。

そこは本書の内容を踏まえながら、
読者自身が、
「youtubeという発表の場」の意義について、
考えを巡らせるべきなのかもしれない。

とりあえず、
発表会でモヤモヤした経験がある人には、
一読をおすすめしたい。