博物学の視点で、
日本の古典を見つめ直す、
文系と理系とを繋ぐエッセイ。
よく考えてみれば、
『万葉集』や、以降の勅撰和歌集って、
巻ごとにテーマがあって、
そのテーマに即した植物なり動物なりを、
詠み込んだ歌が並んでいるわけだから、
ある意味、
博物学的な作品なんだよな。
『枕草子』の、
「星は~」「虫は~」っていう、
いわゆる「ものづくし」も同様だし、
言ってみれば、
俳句の季語も、そう。
『源氏物語』を始めとした、
数々の物語や歌に登場する蛍について、
生物学的な視点から、
その生態を語る章や、
あれほど見た目にインパクトのある、
彼岸花(曼殊沙華)が、
なぜ古典作品に登場しないのか、
という考察等、
科学と文学との架け橋になる、
これぞまさに「教養」といった内容で、
最後まで興味が尽きなかった。