「パクリ」なんだけど、
クオリティがめっちゃ高いとか、
それ自体に価値があるとか、
そういう「ニセモノ」を、
「ホンモノの偽物」と定義し、
果たして、
ホンモノとニセモノの境界はどこなのか、
ニセモノとは本当に悪なのか、
というのが、本書のテーマ。
テーマ自体はそれほど珍しくないのだけれど、
て紹介されているエピソードが、
それぞれなかなか興味深い。
分かりやすい例でいえば、
たとえば人工タイヤモンドは、
元素レベルでいえば、
天然ダイヤモンドと同じだし、
素人目で区別をすることは、
まず不可能。
しかも、天然ダイヤモンドにまつわる、
ブラックでブラッディな倫理的悪もそこにはない、
いわば「クリーンなダイヤモンド」であるわけだが、
ニセモノといえば、ニセモノであるわけで、
これをどう評すればよいのか。
その他、ホンモノの果物とそっくりな味・香りで、
我々を楽しませてくれる人工フレーバーや、
実物の歴史遺跡を保護するために、
精巧に作られたレプリカ、
動物を撮影したドキュメンタリー映画、
などなど、
「ニセ札」のように、
明らかに利益だけを目的に、
人を騙すためのものではなく、
そこに何らかの意義が込められた、
「ニセモノ」をどう考えるべきなのか。
物事を眺める際の、
視点の多様性について、
考えさせてくれる一冊だった。