作家や美術館を冠にした展覧会が多い中で、
特定のテーマを掲げた企画展というのは、
開催する側にとっても骨が折れることに違いない。
今回の「すみだ川」展は、
開催側の気合もひしひしと伝わってくる、
すばらしい企画だと思った。
やはり江戸、そして東京は水の都。
わが国の首都の歴史は、
水運なくしては、語ることができない。
特に江戸の東端を南北に貫くすみだ川は、
水運という経済的な面はもとより、
多くの絵画や戯作、俳諧の題材としての、
文化的な貢献度は計り知れない。
吾妻橋、駒形橋、両国橋、清洲橋、新大橋、永代橋、勝鬨橋、レインボーブリッジ・・・
隅田川から東京湾にかけての橋には、
ひとつひとつに歴史があり、語りたいことが山ほどあるけれども、
それは別の機会に譲っておこう。
つまりは、すみだ川は江戸人のアイデンティティだった、
と言ってもよい。
それを、北斎、広重、栄之、豊国・・・といった名人達がどう料理するのか。
僕の関心はそこにあった。
普段、何十回となく見慣れてきた広重の「江戸百景」にしても、
今回のようなコンテクストがあってこそ、その魅力が増す。
北斎も、然り。
少し前に”にわかファン”になった田善も、
それだけ見たのでは気付かないけれど、
「すみだ川シリーズ」の1つとして鑑賞してみれば、
別の楽しさが見えてくる。
ところで、絵画だけではなく、
「文芸におけるすみだ川」なんて企画も面白いかもしれない。
江戸の戯作から、綺堂・荷風まで。
いつかこの場を借りて、
やってみようかとも思う。