科学史をイチから舐めるように見せかけて、
量子もつれや、
パウリとユングの関係という、
本書のクライマックスへと、
一気に誘い込む筆力はなかなかのもの。
大学生レベルでも理解できるように、
易しく書かれている一方で、
もう少し踏み込むべきところは、
踏み込んでもよいのでは、
というもどかしさも、
若干あるには、あった。
あとはもう少し論点を、
絞り込んでくれた方が、
良かったのかもしれない。
壮大な科学史が行き着いた先としての、
「シンクロニシティ」を描きたいばかりに、
やや冗長になり過ぎた感が、
否めないかも。
シンクロニシティの何が問題かというと、
シンプルに言えば、
情報が光速よりも速く、
伝わり得るかどうか、という点。
これはご存知のとおり、
特殊相対性理論の速度制限を、
超えていいのかいかんのか、
という問題そのものであるとともに、
量子論と相対性理論という、
いまだ相容れない両理論を、
どう融合させるのかという、
科学の究極のゴールでもあり、
人類叡智の悲願でもあるのだ。