こちら方面の知識が皆目ない自分がまず驚かされたのは、
非人の監督役の家及び「溜」が吉原に隣接していたという事実。
人生の享楽と悲哀、これらは実は表裏一体なのだ、
ということを暗示しているようで、なかなか面白い。
「エタ・非人」という言葉自体は、
小学校の社会科の授業のときから耳にしていたものの、
現代まで続く根の深い(デリケートな)問題ということもあり、
なかなかそこに踏み込んだ書物を詠んだことはなかった。
この本は、いわゆる“日本のタブー”に対して、
引け目や負い目を感じることなく、
歴史的事実として真っ向から取り組んでいるあたり、
読んでいて実にすがすがしい。
その反面、我々が知っているつもりの“歴史”なんてものは、
あくまでも為政者にとって都合のよい事実を、
セレクトしただけのものだということに、気付かされる。
浅草・品川の「溜」、小伝馬町の牢、小塚原の刑場、
それらにスポットを当てることで、歴史の沈着物が、
存在感を主張し始めるのだ。