「裸婦」という括りで絵画を眺めるというのは、
意外とありそうでなかった、面白い試みだと思う。
「裸婦」と聞くと(これは自分だけの反応かもしれないが)、
どうも高貴な・近寄りがたい印象があって、
イメージとしては『ヴィーナスの誕生』のような女性を思い浮かべてしまう。
でも実際には、ピカソの描く造形的な裸婦もいれば、
シーレのような淫靡きわまりない裸婦もあるし、
ルノワールのように肌の質感をアピールするものもある。
それぞれの作家の、それぞれの裸婦を眺めていると、
やはり男にとって女性の裸というのは、
ある種永遠のテーマなのかと思えてくる
(それは現代の週刊誌のグラビアにも受け継がれているのかも)。
ただちょっと残念だったのは、
我が国が誇る「春画」が一点もノミネートされていなかったこと。
たしかに春画というのは、ベースは「着衣のまま」で、
それが微妙にはだけているところがエロスだったりするから、
「裸婦」という概念とは違うのかもしれないけれど。
おそらく、あまりにも「正統的すぎて」この本には収められていないのだけれども、
僕が好きなベスト・オブ・裸婦画といえば、
マネの「オランピア」。
ティツィアーノの「ウルビーノのヴィーナス」もいい。
こんな素晴らしい裸婦たちに囲まれて暮らしたりしたら、
ますます婚期は遠ざかるだろうけど・・・。