「人類はどこから来て、どこへ行くのか」(エドワード・O. ウィルソン)

 

ゴーギャンの大作、『われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか』を表紙デザインとし、
それをもじったタイトルを邦題にしたこの本は、

遺伝学、文化人類学といった立場から、
ヒトの起源と進化の謎に迫っている。

ヒトと同様に社会的行動をとる動物、
中でも特にアリの行動について深く言及しているのが特徴だ。

なぜアリが、そこまで統率の取れた社会的行動をとるのか、についての考察はさすがで、
それをヒトにまで敷衍しようというアイデアも素晴らしいのだけれども、

では肝心の、ヒトをヒトたらしめている、
言語・宗教・芸術がいかにして生まれ、いかにして発展してきたかについての章は、
急に科学的・分析的でない書き方になっており、そこがちょっと勿体ない気がした。

進化についての本は数多く読んできたけど、
社会性のある昆虫とヒトを比較する、というアプローチが斬新で、
それだけで評価に値するだろうと思う。